昔の彼?〜お別れして
「昔の彼?」の続きです。
(長いのでたたみます)
彼とお別れしてから、私はしばらく抜け殻のようだった。
自分の身体の半分がなくなってしまったような感覚だった。
でも会社には毎日行き続けた。
会社に行って怒涛の日々を過ごしている間は、つらいことを忘れられるからだ。
そして、私は「自分で選んだ道をいま途中で投げ出したくない」とも
おもったからだ。
でも、ふとしたことで彼を思い出し、すぐ涙が出た。
例えば、もう留守電も入っていない携帯電話を操作しながら帰る帰り道で。
一緒に聴いた曲を聴くことで。
話題に出ていた芸能人をテレビで見るだけで。・・・・・・・・
私にとって、その人はある意味「初めてちゃんと恋愛した」人だった。
恥ずかしいけど「初恋」というやつだと思う。
お互いの痛みを分け合い、背中をさすり、
喜びを共に感じ、
金銭面・外見そのほか「付属」なものはどうでもいい
人間としての「中身ー中身」でつながっていたと思う。
私は、どのくらいだろう、とにかくヨロヨロする自分を
「とにかく毎日『生きておく』んだ」と言い、ようやく立たせていた。
何度も何度も
「まだ間に合う、彼のところに行こう」と思った。
でも思ってすぐ、それは意味のないことだとも知っていた。
あの人がああやって決めたことは並大抵のモンじゃない。
これからの自分、私のこと、両方を考えて考え抜いて
の結論だ。
もう、変わらない。
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話の流れとは関係ないけれど、こんなことがあった。
私が上京して1年くらいたったとき(もちろんまだ付き合っていたとき)、
彼から驚くべき話をされた。
「母さんの居場所が分かった」
ここでも書いたけれど、
彼は1歳か2歳のときにご両親が離婚し、父に育てられた。
それから母親にも会っていない、母親がどこにいるか何をしているのか知らない
、父親は知っているだろうけれどあえて自分から聞こうとは思わない……
だからイキナリのその話に驚いた。
「関東に住んでいるらしい」「家庭があって子供もいる」ーーそんなことを
淡々と話す彼。
そして彼は母親と連絡を取り、彼が住んでいる地方(東京から飛行機で行かねば
ならない距離)のホテルで1晩、母親と泊まった。
私は、自分のことのようにドキドキした。22年ぶりの再会。
お互い思うところは色々あるだろう・・・・どんな話をしたんだろうか・・・・
彼はとてもあっさりと
「うん、色々話したよ」「めっちゃオモシロイ人だった(笑)」
・・・・会ったことがプラスになっているようで、私は一安心した。
私はずっと、お母さんに、会わせてあげたかった。
寂しくて、つらかっただろう今までを取り戻せはしないけれど、
生きているうちに絶対に生みの母には会わせてあげたかった。
だから、うれしかった。
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あるとき
「そっち(東京)に行くよ」 と言う。
何でも、そのホテルで会った日からお母様と連絡を取っていた
らしくお母さんに「ウチに遊びにおいで」と言われたそうだ。
そして何故か、私もそれに同行することになった。
どちらが言い出したのかは覚えていない。
彼女に会うのは息子である彼が2回目、私は初めて。
彼氏のお母様に会うという緊張感だけでなく、最近22年ぶりに
再会した親子のところに私が行ってどんなことを
話せばいいんだろう、という緊張感もあった。
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鈍行電車を何度か乗り換えて、郊外へ。
関東でも私はまだ1回も来た事がない土地だった。
駅前でお母様と落ち合った。
近くの喫茶店で、3人で珈琲を飲んだ。
そうだ、私はアイスコーヒー。冷たいアイスコーヒーを飲んだ。
親子の2人は、楽しげに友達のようなやりとりをしている。
その自然さからはもう20年以上音信不通だったなんて考えられなかった。
私は彼にこっそりと
「仲、いいんだね」と言うと、ちょっとはにかんだような顔をして
「なんか変わってておもしろい人やからね〜(笑)」・
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それから、そのお母さんの今の自宅(新しい家族が住んでいるところ)に
行き、お茶をいただいた。
そしてお母さんは彼の叔父にあたる人を呼んで、
私たちをおすし屋さんに連れて行ってくださった。
私は、あまり食べられなかった。
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「彼女サンがこっち(関東)にいるんなら、これからもちょくちょく
ウチにおいで」ーーお母様はそう言った。
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帰りの電車の中、ガラガラな電車の中で今日あったことを
2人で話した。
どの話をしても、彼はどこかうれしそうだった。
私は、心の底から「良かった」と思った。
彼がつらい思いをしてきたのは、垣間見せる彼の姿や家族に対する
言葉からよーく、分かっていた。
私は実のお母さんの代わりにはなれないけれど、彼が置き去りにしてきた
家庭的な幸せを今からでも味あわせてあげたい、と思って数年やってきた。
でもやっぱり「生んでくれた人」に会えて、これからも交流を持てる
状態になったこと以上にうれしいことはない。
良かったね、良かったね。
- 私と、彼と、関東。東京。
そうだ、そんなこともあった。
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話は戻って。
どのくらいたっただろう、たぶん別れて半年くらいだ。
いきなり私のメールBOXに、彼から1通のメールが届いた。
自分の仕事などの近況などが簡単につづられていた。
私は胸がドクドクした。
でも、うれしかった。
そして、すごくつらかったことは書かずに、主に仕事や日常生活
について記した。
何度かメールでのやり取りが続いた。
私はバカなことに
「まだ彼のことが好きだ。私たちはまたやり直せるかもしれない」と
思った。
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でも・・・・・・・
何通目だろうか。
「言っておかないといけないことがあります」
「実は、opiumnとまだ付き合っていたとき、他の女性のことが
気になりだしていました。
その人はいつも身近にいて、僕に彼女がいてとても長く付き合って
いることを知っていました。
今は、その人のことを大事にしていこうと思っています。
最近、opiumnとメールをしていることを知って彼女がかなり
ナーバスになってしまって・・・それは、僕がその頃どのくらい
opiumnのことを好きだったか知っているからです 」
「だから、申し訳ないけれど今までのように頻繁にメールができ
ないかもしれません」
「今日、これから彼女のうちに挨拶に行ってきます」
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・・・・・想像もしていなかった。
最後のほう、彼が揺れていたこと。
そして私とお別れしてそんなにたってないうちに、新しい彼女が
できていたこと。
そして、 「挨拶に行く」=「結婚をする」ということ。
私は、またもやモニターの前で 涙が次から次へと溢れ出して
止まらなくなった。
くやしさでも、腹立たしさでも、なんでもない。
ただ、ただ、深い悲しみだけだった。
私の様子をみて、部長(女性)は私を呼び出してこう言った。
「今日は、帰りなさい。・・・・恋愛のことでしょ?
そんな状態で今日仕事はできないもんだから」
女性ならではの気遣いに感謝しながら、私は、なんとか自宅まで
たどり着いた。
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このショックは、彼から別れの手紙が来たとき以上だった。
もう本当に、彼とのつながりはなくなってしまった。
あのとき私をみつめていてくれたあの人は、もういない。
その目は他の人にむかっている。
あれだけ分かり合っても、「分かり合えない」状態に
なってしまったことへの空しさ。
人間だからこそ、の空しさ。
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彼は
私が就職活動をしているとき私と結婚したがっていた。
私は、それが分かっていた。
でも、それに「YES」と言えなかった。
(彼がハッキリと結婚について言わなかったということもあるけど)
だから、つながらなかった男女。
かたや、ちゃんとつながっていこうとしている男女。
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私はここで初めて、もう彼が「他人」になってしまったこと
触れることもできないってことを
痛感した。
やっと、分かった。
それから数年。
彼とは連絡も取っていないし、1回も会っていない。
立ち上がるまで、相当つらかった。
でも、立ち上がった。
その間に、恋愛もしたことも大きい。
「彼以外は好きになれない」と思っていたけれど、そんなことは
なかった。
同じ人なんて1人もいない。
だからこそそれぞれ、人にはいいところや魅力がある。
「これからも人を好きになれる」「好きになるってコトは尊いことだ」
と思えるようになった。
今は、彼のことを思い出すことも(ほとんど)ない。
「そういうこともあったなー」と思い出す、かなり前の
出来事だ。
とても冷静に話せる。
色んなところへ行った。色んな話をした。
人を大事にするということを学んだ。
人を愛しく思うことを体験した。
彼は、その彼女と結婚したかな。子供は産まれたかな。
彼には、幸せでいてほしい。幸せになってほしい。
そうだ。
私はきちんと、「ありがとう」って言えたかな。
(以上。)