泣かないで おばあちゃん





このGW、実家(=いなか、本当のイナカ)に帰らなかった。父は何度も催促していたのだけど。

今日、関東の某地で緑の木々を見ながら思ったのは、おばあちゃんのこと。おばあちゃんのために、そのためだけにでも帰れば良かった。

ウチの祖母は90歳をゆうに越えている。数年前から自宅で寝たきり。杖と手押し車があればかろうじて歩ける。頭はしっかりしていて耳もよく聞こえる。

私はいわゆる「おばあちゃんっこ」だったのだと思う。物心ついたときから、一緒に寝ていたのは、おばあちゃん。それは、2階の両親の寝室が狭くて、父・母・妹の3人しか横になれなかったから?かな、多分。

今では細く小さくなってしまったおばあちゃん(と呼ぶほうが私には自然!)も、昔はかなりふくよかだった。そしてモチ肌。小さい頃の私はおばあちゃんの腕枕が大好きだった、大好物。モチモチしてて冷たくて気持ちが良かった。おねだりして、腕枕をしてもらった。

おばあちゃんは、働き者だった。古くなった洋服を捨てようとしていると、いつの間にかなおしてくれていた。余った毛糸を集めていろんなものを作っていた。

いつの頃からか、「鍼の穴に糸が通らんけん、通して」とお願いするようになった。

いつの頃からか、「足がいうことをきかん」と言うようになった。

いつの頃からか、よく転ぶようになった。

そしていつの間にか、1日のほとんどを介護用ベッドで寝て過ごすようになった。



おばあちゃんと離れて暮らすようになって10年以上。私は、親不幸もそうだけどおばあちゃん不幸もしていると思う。

おばあちゃんは、私が帰省するのを楽しみにしている。そしてまた東京に戻っていく日を時間を、しつこいくらい確認する。

私は実家に帰ると、なるべくおばあちゃんの部屋に行くようにしている。寝たきりのおばあちゃんは私に気づくと、自分の日常を教えるかのようにデイザービス(1週間に2回、老人ホームに行く)で作った革製品や、額を見せる。


「どんな?(これ、どう?)目が薄いけん、うまいこと、いかん」

「えー、すんごい上手だよ。きれい。すごいね〜こんな細かいことできるの!」というようなことを言うと(本当にそう思う)とても嬉しそう。



そして私に、仕事はどうか、とか、困っていることはないか、と聞く。そして必ず最後に、おばあちゃんなりの格言を。

「辛抱せんといけんときもあるけんね」
「身体だけは大事にして元気でいればもうそれだけでええよ」


昔は「わかってるよー」と思っていたことも、今はとても素直に聞ける。