昔の彼?




これの続き。

長いです長いです。




恋愛の始まりにおいてここまで「行動」したのは
後にも先にもこれっきりだと思う。




それは「若さ」(でくくってしまおう!)の
なせる業でしかなかったのだ。


(あ、でもここまでググっときたら同じような
コトできるかも☆)



その人は、
私より1学年上で、理系の学部だった。


キャンパスは違った。

彼の学部は本学(私たちの学部がある)から
車で1時間30分かかる場所にあった。


なので、普段、彼はその別キャンパスに
通学し、そのあたりに住んでいることになる。


ではなぜ体育の授業を受けに
1時間半もかけて、こちらのキャンパスに来ていたか。


それはよくあることだは、教養科目の「体育」の単位を
取りこぼしていたからである。

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もう体育の授業はなくなる=彼に会えなくなる


私は単純に、これはイヤだなーと思った。


もう体育の授業はおろか、キャンパスですれ違うことも
ないだろう。
彼は(たぶん)体育の単位を取得してしまって、
自分のキャンパスに帰っていくのだから。



どうすればいいんだろう……


私は彼のことが
「好き」なの?


いや…そこまでじゃない。。。


話をしたこともないし、あちらは私のことなんて
知っているわけもない。



でも、話を、して、みたいな。

ただ、何となく。
1回でもいいから話をしてみたいな。



そもそも
どんな人か分からない。

ものすごく怖い男かもしれない。
ものすごく野蛮な男かもしれない。
もんすごく遊び人かもしれない。。。。。。。




でも。

何だかそんな気はしなかった。



笑顔と、ブルーのジャージと、スニーカー。
光の中に飛び出していった、あの感じ。


きっと、いいひと、じゃないかな。


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私はめちゃめちゃ考えて、悩んで。


とりあえずいま思っていることを伝えなければ
始まらないと思った。


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体育の授業があった日。


早々と着替えを済ませ、私はキャンパスの中庭の
あたりをウロウロ。


きっとそこなら、その人に会えると思った。


しばらく待っていると、その人が現れた。

古着のジーンズに、チェックのシャツ。
リュック。



友達と一緒だ…(こわいよーーー)
うわ、もう何もできない…



すると彼は、一人でそばにあった売店
入っていった。



ドキドキドキドキ……


心臓からドクンドクンと血液がスゴイ速さ
で流れているのを感じた。


「今しかない」
「恥をかいてもいいし。後悔するくらいなら」


彼が出てきた。
手には、あんぱん(手作りでおいしいのだ)。


私はタタタタッとかけていって「あの」という
言葉を発した。


その人はビックリして立ち止まった。

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そこから……具体的に何を話したのかは、覚えていない。

ただそのまんまを伝えた。


体育の授業で一緒であること、それで・それで……
なんだかわからないんだけど(→まさにこのままの気持ちだった)
お話がしてみたいな、って思ったんです。


その人の顔なんて、見ることができなかった。


彼は
「え……」「えーと…えーっと…」ということを
言っていたような気がする。


驚いたのは
「私のことなんて知らないですよね……?」との問いに対し
「なんとなく…知ってますけど」


…!  当たり前か、バレーで同じチームだったんだし。


それから私たちはどうしていいか分からない状態で
立ち尽くし、モジモジしていたような。
(そりゃそうだよねー彼からしたらイキナリそんな
ことを言われても…)

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(今になって思うのだけど、
なぜ私は
「彼に彼女がいたらどうするのか」、
ということを考えなかったのだろう)


彼だって
「好きです」 という決定的なことを言われれば
「付き合っている人がいます」 とか
「ほとんど知らない人だし…」 とか
「いやです」 とか
何らかの返事はできたと思う。


しかし私が告げたのは
「なんか気になって…話してみたいなーなんつって」
という、本当に答えに困ることなのだ。


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無言が続いて、私はもう恥ずかしさで
耐え切れなくなっていたそのとき。


その人は
「どうしたらいいかなぁ……」


普段ヒマじゃないですよねっ、そうですよねっなんて
慌てて訳の分からないことを言っていると


「ヒマってわけでもないんですけど…バイトとか…
 んー…
 こういうときってどうしたらいいんかなー…」


そして、ハッと思いついたようなその人。


「連絡先……渡しましょっか……」



きゃあああああああああーーーーーー


どうしようどうしようどうしようどうしよう


何これ何これ何これ何これーーーーーーーーー!




「何か書くものあります?」



必死になってバッグから紙とペンを取り出した私。


その人は、その紙に
連絡先を、書いた。


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結局、話しかけてから別れるまで
約20分。


売店の前で。


彼は、あんぱんを買っていた。
あんぱんと、左手に見えた教養の教室。


私はひたすら自転車をこいで、こいで、こいで、こいで・・・・・・・


自転車で数分の、自分のアパート(まさにそんな感じ)
に帰った。


「今になって」で、顔が真っ赤になってきた。
変な汗もかいてきた。


うわわわわわわわわ〜〜〜!!!!
やっちゃった……


その日の出来事が整理できないうちに、彼が書いた紙を
見つめた。


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彼の紙には、ポケベルの番号とアパートの電話番号の
2つが記してあった。

(その頃、ウチのようなド田舎の大学生は
 「やっとPHSを持ち出した」という時期。
 携帯なんて持ってなかった。
 ポケベルも、まだ少し生きていた )

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私は彼に伝えて、そのあと彼がどういう言葉を
発するのかなんて予想もしていなかった。


連絡先を教えてもらえるなんて、思っても
いなかった。


「ただ伝えるだけ」のつもりだった。
(今考ええるとそんなわけにはいかない>彼的に
 のにね)


それなのに、『話したい』と思っていたアカの他人と
話し、これによって彼に覚えられ、
しかも連絡をしてもいい?


そんな
作られたような結果に、現実感がなかった。


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2日後、彼に連絡を取った。

電話はそのアパートの共同電話だったので(これもまた
あとで詳しく)彼を呼び出してもらうこととなった。


彼が出てきて・・・・・・
何を話したかよく覚えてないけど、とにかく
2時間くらいしゃべった。



緊張と話しすぎで、私はノドがカラカラになった。



その電話で、
彼と遊ぶことになった。

しかも、彼のキャンパス・彼の部屋に行くことに
なった。


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私が彼を気になっていることを知っていた
女友達は
「マッチ棒とーーーー!?」
と驚き、まず
「よく話しかけたねぇ」と私の変な行動力に
感心していた。


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初めて彼と会う、日。


信じられなかった。
あのままだったら他人のままで、キャンパスも
離れすれ違うことすらなかったのに。


いま自分は、彼と会うために鈍行電車に
揺られている。


さびれた街。
1時間に2本程度しかない駅。
田んぼの中を駆け抜けていく電車。


○○駅で、乗り換え。
本当に、人が少ない。

大学のために実家を離れ
ここに住んでいるけれども、
一刻でも早くここを出たかった。


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このとき私には
彼に対して、恐怖心も何もなかった。


ただ純粋に、楽しみで、でも彼にどう思われるのか
が怖かった。


彼は、、、、
何となく、だけれど、私が思っていたように
青空のような人じゃないかな、と思った。


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電車で1時間30分。

彼の言う最寄り駅に着いた。


彼は、駅に迎えに来てくれていた。
きゃああああーーー自分のしたことが恥ずかしくなって
もう、どうしようもなかった。


でも今さら後悔しても遅い。

今日で彼に会うのも最後かもしれない。
だとしたら、今日だけでも楽しもう。

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彼は自転車で来ていたけど、それを引いて
一緒に歩いた。


驚いたのだが、最寄り駅からキャンパスや彼の部屋
までは
徒歩で40分以上かかるという。

(しかしその街にはいい交通手段がなく歩くしかなかった)


のどかな道を歩きながら、ぎこちなく話をした。


草むら、林・・・
自然いっぱいの場所を通りながら、歩いた。

「背、高いな」 と思った。


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ウチのキャンパス(別館)には
初めて来た。


理系の学部しかない、男くさいキャンパス。


そこを通りながら、彼の部屋に行った。

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彼の一人暮らし(ウチの大学の90%が一人暮らしだった)の
部屋は、大学から徒歩15分。


バラックの二階建てのような建物だった。
(あとで聞いたらそこはとある建築会社の男子寮で
 彼は特別にそこに住ませてもらっている、という
 ことだった)

ギシギシと鳴る床。
薄暗い廊下。


2階に彼の部屋はあった。


キッチンと、6畳の部屋。

少し西日があたっているけれど・ぐらい部屋だった。

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私は少し意外だった。


彼はもっと(って言ったら失礼だけど)新しくて
おしゃれな部屋に住んでいるのだろうと
勝手に思っていたから。


まぁそんなことがすぐ吹き飛ぶくらい今度は
違う緊張が襲ってきたのだけど。


机を挟んで
彼は窓側、私は台所側に座った。


音楽はフリッパーズギターだったと思う。


・・・・・何を話したのかは覚えていない。
本当に、何を話したんだろうか。


お互い何も知らないのだから、自分の出身地の話、
学部の話・・・そんなものをしたのだろう。


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私は今でも、覚えている。

西日でよく見えない彼のシルエット。
(マッシュルームとか笑)

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助かったのは、
「なぜ自分に話しかけてきたのか」
とか、それまでのことを聞かれなかったこと。


私はまた恥ずかしくなってしまうし、
説明のしようがなかった。


言えたとしたら
「ただ話をしてみたいと思ったから」
としか言えないから。

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何時間か話していて、私はホっとした。


それは、彼がとても、すがすがしくて
いい人だったからだ。



彼は
私のことをなんとも思ってないだろう。


1回くらい、と思って遊びに来させたのだろう。
私はきっと、彼のタイプではないだろう。
彼に会えるのも、今日が最初で最後だろう……



でも、それでも、もう良かった。

自分が頑張って(?)ここまでやり遂げたことに
拍手を送りたい気持ちだった。

(ああ、恋愛って結局自己愛なんですよね…)


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日が暮れて部屋の電気を灯さないといけなく
なったとき、「御飯どうする」ということに
なって、
どういう流れだか、私が作ることになった。



簡単に短時間でできる(私は帰らないといけなかったから)
カレーに決めた。


近くのボロ商店(真っ暗で本当に「ボロ」なんです)に
2人で買い物に行った。
なんだかくすぐったい気持ちだった。


カレーを作ろうとすると、なんと彼のウチには
「鍋」がなかった。
フライパン1個のみだ。


「炒め物しかしないからなぁ・・・・」
と恥ずかしそうに言う。



そのフライパンがかろうじて深さがあったため、それで
無理やりカレーを作った。

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それを食べていたら、確か20時くらい。

そろそろ帰ろうかというとき、その時かかっていた音楽
フリッパーズのことが気になった。


「わたし,このCD持ってないんですよねー」
と言うと、
「貸そっか」


貸す → 返してもらわなければならない → また会う


「また会ってもいい」ってこと?????


彼の
「貸そっか」があまりにも自然で当たり前のような感じ
だったので、少し驚きながらも
勢いで
「貸してください」と言って借りてしまった。


Three Cheers for our side ~海へ行くつもりじゃなかった
「Three Cheers for our side ~海へ行くつもりじゃなかった」を。




彼は、また徒歩40分かけて私を駅まで送ってくれた。
そして真っ暗な中、自転車をこいで帰っていった。



手をつなぐことも、何も、
何もしなかった。