親になるってどんな気分なのかな?〜横山健




言わずと知れたHi-Standard(希望をもってあえて「元」はつけない)のメンバーであり、PIZZA OF DEATHの総領、横山健。ーーKEN YOKOYAMA


彼に、初めての子供が産まれた。長男「横山楓太」くんが、産まれた。


サイト「横山健の別に危なくないコラム ∞(無限大)」より


(略)楓太の頭が見えた瞬間、オレは妻の手を握りながら、「よし、もうちょっとだ!おいで!」と心のなかで叫んでいた。実際に叫んでいたかも知れない。倒れるだの泣くだの、そんなのをとっくに飛び越えた不思議な、今まで感じたコトがない新しい感情だった。恐らくその瞬間に、オレは「親」になったのだろう。
 そして産声をあげている楓太に鼻をくっつけて、「よく来たね」と話しかけた。この時ばかりはグッと来た。

泣きそうになった。


(略)「とても大変」だ。
 しかし、彼がオレに与えてくれた感動…感激…感情…何と表現するべきか分からないが、彼がオレの人生に運んできてくれた「新しい微笑み」に比べたら、そんなモノ「屁」としか言えない。
 オレは今までの35年間の人生でいろんな感動の場面に出会ってきたが、そのどれとも全く違う喜びなのだ。「人間にはまだこんな感情があったのか」と思わされる程、何とも似ていない

これまで最前線を走り続けてきたケン兄さんには、様々な「感動」があっただろう。
それなのに「まだこんな感情があったのか」と思わせるような「感動・感情」。
これはその立場に立った人にしかわからないものだ、想像もできない、と思った。



オレは10代の頃からミュージシャンとしての自分を確立すべく、自分の情熱、時間、金、持てるモノ全てを注いで生きてきた。バイトをしながら音楽をしていた頃、オレが家庭を持つコト、ましてや子供を儲けるなど、夢のまた夢だった。一生無理だと思って諦めていた。そういった普通の幸せを「放棄」したに等しい。そんなオレに子供ができるなんて…嬉しい以外の言葉が見つからない。一度放棄した幸せを、普通より少し遅かったけど、手に入れるコトができたのだから。

「音楽に自分の全てを注いできた」−−そう言い切る裏にある彼の(きっと)貧乏だった頃、そのときの苦労…。それを思うとそこまで「一身をささげる」ことができていない私は、本当に尊敬してしまう。


 楓太に、「将来何になってもらいたい」とか、「こんな人になって欲しい」とか、具体的な希望は何も持っていない。音楽をやりたきゃやればいい。絵を描きたきゃ描けばいい。やるコトがみつからなくて悩むのも、時にはいいだろう。何だっていい。
 ただ、優しい人間になってくれれば、それで良い。オレより早く死ななければ、それで良い。

そうなんだよ。親は実は、「私たち」子供に何も期待しちゃいない。
例えば、親が子供が産まれたその瞬間に「大学に入って、安定した生活をして、孫の顔を見せてほしい」だなんて思うだろうか。思わないと思う。
「元気で」「心の優しい子に」「自分より長生きして」−−こんな感じではないだろうか。


つまり、もし誰かが潜在的にもしくは意識的に「親の期待に沿わなければ」とか、「もっとスゴイ生き方をしたい」ともがいて苦しんでいるのであれば、少し立ち止まってみたらいいと思う。

  •  「健康で」 「心優しく」 「親より長生き」


この3つさえ心に留めて生きているだけで、いいんだと思う。十分なんだと思う。
しかもこれさえ叶っていれば、そんな反れた生き方なんてしないと思う。


もちろんそれ以上を望めば青天井だ。「デッカイことやりたい」「お金が欲しい」「いい生活がしたい」etc…それがエンジンとなり生きる意欲にもつながる。


しかし、もしそれに疲れているのだとしたら、この原点に戻ってみたらいいのではないかと思った。


少なくとも私は、このケン兄さんのコラムを読んでめっちゃしんどくなったときはこの3つを思い出そうと思った。「そっか、その3つでいいんだ」と。





親としての責任感は、潜在的に人並みに持ってるつもりだ。でも「育てよう」なんて気持ちは持っていない。むしろ、オレがこれからいろいろと教わるんだ。

 オレはこの先、楓太と共に行く。

 それから妻に、「オレの子を産んでくれて、ありがとう」。




きっと、ケン兄さんは「いい父親」になるんじゃないか。
(結婚もしていない、子供も産んだことのない私が言っても何の説得力もないかもしれないけれど)
「親」になるってどんな気分なのかな。(私はオンナなので)子宮でその子を温めて生み出すのって、どんな気分なのかな。きっと、きっとこの世で一番大事なモノになるんだろう、かわいくて仕方がないんだろうな…



時々、音楽(音源)以外のアーティスト・バンドの人の言葉や文章から、学ぶことがある。
ズンズン心に響くことがある。


(ちなみに私はもともとハイスタが好きで、ケン兄さんのライブは今まで5回くらいしかみてないけど)


そう、このケン兄さんの今回のコラムのように。


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